幻のコーヒー「コピ・ルアク」
自家焙煎珈琲専門店かほりでは、インドネシアのジャコウネコの糞から生まれた世界で最も希少価値が高く、高価といわれている貴重なコーヒー「コピ・ルアク」を取り扱っています。
コピ・ルアクとは、ジャコウネコの糞から採れる未消化のコーヒー豆のことで「コピ」はインドネシア語でコーヒーを意味し、「ルアク」は現地のマレージャコウネコの呼び名です。ジャコウネコが赤く熟れたコーヒーチェリーを餌として食べ、果肉は消化されますが、種子にあたるコーヒー豆は消化されずにそのまま排泄されます。その中からコーヒー豆を取り出し、綺麗に洗浄して天日干しした豆がコピ・ルアクです。コピ・ルアクは「ジャコウネコの排泄物から集めた世界一高価なコーヒー」として1995年度にイグノーベル栄養学賞を授与されました。お腹の中で豆が発酵するため、独特の風味があり、甘みがあります。よく、インドネシアのお土産として口にすることはありますが、焙きたてで店頭販売しているのは珍しいので、当店のホームページを見て、遠方からも、よくご来店して頂いています。
近年、そのコーヒーが映画に登場したため、その名が広く知られるようになりました。今回は、幻のコーヒー「コピ・ルアク」が映画の世界でどのように登場していたのか少し紹介させていただきます。
かもめ食堂
その映画のひとつである「かもめ食堂」は、北欧フィンランドで、レストラン“かもめ食堂”を開店した女性と、それぞれに事情をかかえ、そこに集まる人々の心の交流が描かれた心あたたまる作品です。映画の中で、コピ・ルアクは、コーヒーを美味しく淹れる魔法の言葉として登場します。また、映画の終盤では、店主があるきっかけでコピ・ルアクを手に入れ、食堂に集う人々と共に、その貴重な味を楽しみながら、心開きあい、語り合うシーンがあります。まるで、コピ・ルアクが人々の心に魔法をかけたかのように、自然と心開かせ、あたたかい時間を作ってくれたのだと思いました。
最高の人生の見つけ方
コピ・ルアクは映画「最高の人生の見つけ方」にも登場します。俳優ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンが出演している映画なのですが、ほんのり泣かされるストーリーです。金持ちで、 会社をいくつも持ち、金稼ぎに忙しく、口が悪く、悪態ばかりのエドワード(ジャック・ニコルソン)。家族のために夢を諦め、真面目に車の整備工として働いていた誠実なカーター(モーガン・フリーマン)。真逆の人生を歩んできた2人が、同じ病気にかかり、同じ病室で出会い、余命宣告をうけてしまいます。お互い辛い治療に耐え、苦しむ姿を目の当たりにする…2人は人生の終わり方について考えるようになります。そして、2人は旅に出る決心をします。死ぬまでにしたいことリストを握りしめて。
全く違う人生を送ってきた2人が書くリストの内容が、これまた2人全く違っていて楽しい。カーターは見るからに人が良さそうな内容で、「赤の他人に親切にする」とか「死ぬほど笑う」とか「荘厳な風景を見る」など。一方のエドワードは、金持ちの実業家らしく、「世界一の美女とキスする」とか「スカイダイビング」とか「ライオンを狩る」など。こんなに全く価値観の違う2人が、意気投合し、一緒にリストを実行していく様子は、笑えて泣けます。とても余命半年には見えないほど、世界中を飛び回って楽しむ2人に、ついついこちらもつられて笑顔になります。悲壮感なんてちっともありません。そして、映画終盤、悲しいことにカーターが先に亡くなってしまうのですが、カーターは最期にエドワードに笑撃の事実を告げます。エドワードが愛飲していたのがコピ・ルアク。金持ちが飲む最高級コーヒーだと思っていたのに、「それは猫の糞で作られているんだぜ」といわれ、”死ぬまでにしたいこと”の1つであった「死ぬほど笑う」ことができるのです。
不器用な2人が、笑いあい、時に傷つけあいながら、お互いの命を全うするために想い合う姿は、愛おしく、同士の熱い友情に涙なしには見ることができない映画でした。
幻のコーヒー「コピ・ルアク」は2つの映画において、人々の心を通わせる役割となっていました。愛する大切な方と語らうその時に、となりにコーヒーを。この映画たちのように、幻のコーヒー「コピ・ルアク」が素敵な時間を作ってくれるはずですよ。
臼杵 真理